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I歯科医院の高楊枝通信。

I歯科医院の高楊枝通信。

高カリエスリスク症例0.5(糖質と虫歯の関係)

17歳女性、上顎2〜2、隣接面カリエス

前回のつづき

https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/diary/202403040002/

「虫歯の電気化学説」では虫歯の成因は非常にシンプルで以下の2つの条件しかない。しかしこの2つの条件を同時に満たしていなければならない。

1、酸性環境中(H+:水素イオン:プロトン)に歯牙が存在していること

2、歯牙の内外に何らかの電位差が存在していること

前回までは歯牙の主成分のHA(Hydroxyapatite)中をH+(水素イオン:プロトン)が流れ、H+がHAから外に出るときにHAからCaが奪われHAの結晶は崩壊する。つまり虫歯になるという話をした。

H+がHA中を移動するとしてもH+を動かすなんらかの力が必要で、それを起電力とよんでいる。
今日はその起電力の話をしよう。

以下の図を見てほしい。下のリンク先の亜鉛メッキ工場のサイトから拝借したのだが、どこから見ても虫歯に見える。
それもそのはず、金属のサビと虫歯は同じカテゴリーに属する電気化学的な腐食だからだ。

db7376d164d23a8cb79236ff3723dfa9e78cd7fb.13.2.9.2.gif
http://www.yoshizaki-mekki.co.jp/eigyou/aen/zn.html

この図は異種金属接触腐食とかガルバニック腐食と呼ばれるものだが、イオン化傾向が異なる金属が酸性電解質中で接触していると、イオン化傾向が大きい方が溶けるというものだ。

イオン化傾向は簡単に計測することができ実際に測ってみたことがある。
https://plaza.rakuten.co.jp/mabo400dc/10000/

以下、象牙質を基準としたイオン化傾向の一覧表(世界初!)を載せておきます。
亜鉛:-0.35V
象牙質:0V
エナメル質:+0.002V
アルミニウム:+0.015V
鉄:+0.05V
鉛:+0.18V
高銅型アマルガム:+0.25V
歯科用71%銀合金:+0.5V
歯科12%金銀パラジウム合金:+0.68V
歯科用70%金合金、銅:+0.7V


上に行くほどイオン化傾向が高い、腐食しやすい、溶けやすい、虫歯になりやすい。
下に行くほどイオン化傾向が低い、腐食し難い、安定。

象牙質(歯牙の内部)とエナメル質(歯牙の外側)を比べると僅かながら象牙質の方がイオン化傾向が大きい(溶けやすい)。つまり虫歯になりやすいことがわかる。

この場合、酸性溶液中に歯牙があるとエナメル質側からH+が象牙質方向に流れそこから外に飛び出すときに象牙質だけが溶ける。

H+はプラス荷電粒子だから図の下(エナメル質)から上(象牙質)の方に流れる。

一般的な金属ではH+ではなくマイナス荷電粒子のe-(電子)が流れるので、方向は逆だが、結果的には同じようにマイナス側が溶ける。





実際の画像で見てみよう。歯牙内部の象牙質だけが溶けて外側のエナメル質は硬いが脆いので象牙質の裏打ちを失って欠けるように失われる。溶けて無くなるというわけではないのだ。












今日はイオン化傾向の差による起電力の話をしたが、次回は別の起電力の発生メカニズムの話を予定している。

つづく


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